2014/05/19
「殺風景」と「眠る魚」

芝居「殺風景」を観に行く。
挿入歌「黒の舟唄」は野坂昭如作詞と初めて知る
「家族」って決して温かくて包まれる居心地のいいモノだけとは
限らない。家族だからこそ生じる違和感や憎しみもある。

パンフレットで明治大学文学部教授の諸富祥彦氏が説いているのだが、
「日本で起きている殺人事件の半数以上は家庭内で起きている。
89年には39・9%だったのが2010年には52・3%。
家族の抱える闇は深さを増している」

で、この舞台はある意味、家族の絆を描いている。
ただし犯罪によって結びつきを確認するという
まあ、なんともいえない重くて深い題材。

ヤクザもどきの一家が犯罪に手を染めていくところが、
ちょっと尼崎連続殺人事件を思わせる。

美スタイル&絶対的な小物感あふれる大倉孝二、
キュートな狂気と妖艶な稚拙性をはらむ荻野目慶子、
とてつもないビッチ感あふれる大和田美帆(バクの娘ね)、
戦慄のキチガイ感とあばずれ感を成立させるキムラ緑子、
空気を瞬間で凍てつかせる江口のりこ・・・
手練れの役者がこれでもかこれでもかと登場してくる
贅沢なお芝居だった。

好きな役者さんばっかりで、
(他には太賀、近藤公園、尾上寛之、西岡徳馬ら)
心底安心&堪能できた。
重苦しいんだけど、家族の意味を考えさせられる面も。
「共同体の呪縛」にとらわれていると、おかしなことになるって話でもある。

挿入歌「黒の舟唄」は改めていい歌だなぁと。

男と女の間には深くて暗い川がある
誰も渡れぬ川なれど
エンヤコラ今夜も舟を出す
ローアンドロー ローアンドロー
振り返るな ロー ロー

土地への思いの深さを改めて知る
眞砂子さんの本が出た。
本当に残念なことに未完の作。

不安や違和感を口にできない空気が渦巻く日本の現状。
これを形にできるのは作家や漫画家だと思う。

「日本は福島原発事故を境に、ファンタジー世界に入り込んでしまったのだ」
「たぶん、これが思考停止と呼ばれる状態なのだろう」

眞砂子さんの思いは登場人物に込められている。
最後まで描くことができなかったけれども、
結論は出ている。
口を閉ざさないこと。全力で逃げること。

装丁には文中にも登場する「原爆の図」。
丸木位里・丸木俊 作。
長崎原爆資料館所蔵

ふと思い出すのは小噺。
沈没寸前の船に乗っている各国籍の人々に
避難のためにどんな言葉をかけたら海に飛び込んでくれるか、
というもの。国民性の特徴を表すものなんだけど。

イギリス人には「紳士はみな飛び込んでいますよ」
フランス人には「絶対飛び込まないでください」
ドイツ人には「規則ですから飛び込んでください」
アメリカ人には「飛び込めばあなたはヒーローですよ」

で、日本人には
「みなさん飛び込んでますよ」。

みなさんそうしてますよ、に弱い国民性。
「これ今いちばん売れていますよ」
「これ人気NO.1の商品なんですよ」
と言われて買いたくなる性質。

もちろんこれがいい面もあるけれど、
間違った方向へ一斉に向かうのは怖い。

Posted by 吉田潮 on 2014/05/19 at 10:45:57




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